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「IQは金で買えるのか 世界遺伝子研究最前線」読了。

IQは金で買えるのか――世界遺伝子研究最前線

IQは金で買えるのか――世界遺伝子研究最前線

2015年に出た本です。前々から遺伝子検査をしたいと思っていて、今月から始まったGenelife Premiumというサービスの検体を先日送ったところで、情報収集のために読みました。

「赤ちゃんの性別を決めるのは父親の遺伝子?」という質問

プロローグの時点で既にびっくりさせられたのがこの質問です。上記質問の答えは○なのですが、日本での正答率は29%だったそうです。3人に1人しか赤ちゃんの性別を決めているのが父親であることを知らないとは、遺伝学の本好んで読んでる人間からすると驚きでした。

ちなみに米国での正答率は63%です。進化論を否定している人もそう珍しくない国に負けているとは。

子供が男の子になるかは、通常Y染色体を持っているかどうかで決まります。Y染色体は男性しか持っていない=遺伝させるのも男性しかできません。

着床前検査にしても米国や英国に遅れているなど、日本の遺伝子医療に対するアプローチはあまり積極的とは言えませんが、国民の意識レベルでそれが現れているのかもしれません。

本書は男女の産み分けを行なっている産院や、着床前診断や中絶手術を巡る論争、遺伝子検査をサービスとして行う民間企業、遺伝子に特許は認められるのかが争われた裁判、デザイナーズベビーの展望など、米国の事例を中心に取り上げながら、一人っ子政策によって子供の数が限られるために、国家レベルで子供の質にこだわる中国などの例を、当事者である遺伝学者や活動家に取材するなどして描かれた本です。

遺伝子が同じならば全く同じになるか、クローンとしてヒトラーを蘇ったら独裁者になるか?亡くなったペットを蘇らせるペットクローンのサービスが早期撤退したのは何故か?など、中々興味深く読めました。

親の経験は子に遺伝する。

同じ遺伝子を持っていても病気になる人とならない人がいれば、さらには同じ病気でも症状が軽い人と重い人がいます。身近な例としては、同じ風邪でも喉からくる人と頭からくる人がいますね。これは表現型と言われるもので、同じ遺伝子を持っていてもその遺伝子の働き方の程度によって個性が異なるのです。

自閉症に関連するとみられている遺伝子を持ちながら、自閉症を発症していない人は高い数学能力を持つことが研究により明らかになっています。

自閉症と高い知能の間に遺伝的な関連性が認められる(英・豪研究) : カラパイア

アムステルダムで飢餓を経験した母親から生まれた子供は、成長後、肥満傾向が強かったそうです。母体の危機に遺伝子が反応して、子供の飢餓に関係するスイッチがオンになった結果と考えられています。環境により遺伝子の発現が左右されることをエピジェネティクスといいます。

一方で、飽食した男性の息子や孫は平均寿命が6歳短い(裕福であるという社会条件を考慮すれば32歳も短い)という調査もあるなど、親の環境が子供すら変えてしまう事例を見ると、末恐ろしいものを感じます。

遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実

遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実

エピジェネティクスについては上の本がより詳しいです。同じ遺伝子を持っていても、食事や生活習慣などで持っている遺伝子のスイッチが切り替わるという、持って生まれた遺伝子は変えられないが、どの遺伝子が働くかは環境によって変えられるという希望があるエピジェネティクスに焦点を当てた本でこちらの本もなかなか面白いです。

男女産み分けについて、検索をかけてみたところ、日本でも海外に受精卵検査を委託する形での男女産み分けが可能なようです。へー。 世界基準の遺伝子検査をお届けする株式会社Cell and Genetic Laboratory

少子化傾向の中、兄弟が多いと目立ちますが、兄弟が多いご家庭って、特定の性別が産まれるまでご両親が頑張ったパターンが少なくないですよね。

「ハリー・ポッター」シリーズのウィーズリー家なんか上からビル、チャーリー、パーシー、フレッド、ジョージ、ロンときて一人娘のジニーが末っ子ですし、ご夫妻は娘が欲しくて貧乏子沢山だったんだろうなーと想像します。

例えば男女を産み分けが出来れば、ウィーズリー家のような極端な家族構成はなくなるでしょうね。という意味で、たかだか男女の産み分け程度の話でも一般的になれば影響は大きいわけで、これが外見や才能の選別まで話が進めば本の中でも言及されていますが、映画「ガタカ」の世界です。

遺伝子選別について、「子供の成功の可能性を高める手段があるならば親はそれをするだろう」と語られていますが、それはまあそうでしょうね。男の人だったら息子に低身長やハゲは遺伝させたくないと願うでしょうし、私だったら太い足と運動音痴は子供に遺伝させたくないですもん。

ただ、あえて遺伝子を操作しなくとも、環境によって人類は変わっています。現代は骨盤の小さい女性が増えてるんだそうですが、何故かというと帝王切開が一般的な妊娠手段となり、骨盤の小ささで自然分娩が難しかった女性でも遺伝子を残すことができるようになったからだそうです。

近年、小顔がもてはやされているのは、骨盤が狭くなった関係で、産道を通りやすそうな子供が生まれる可能性を無意識に考慮しているからなのかもとか考えると面白いですね。