そとでよ - モトコ・モリの暮らし

元ひきこもりの気ままな生活。

「ヒトラーの忘れもの」吹替版の感想

劇場で字幕版5回見て、ブルーレイ買って字幕版さらに2回見て、吹替版3回見た人間の感想です。ネタバレしかないです。

吹替版感想

字幕版より軍隊口調が強調されてるので、口調の変化で軍曹との距離感とかが感覚的に分かりやすくなってます。

字幕版より正確なニュアンスが再現されてるシーンも多かったです(ドイツ語わからないので英語字幕と比較してですが……)

国に帰ったら機械工になるというヴィルヘルムにヘルムートがつっかかり、セバスチャンが止めるシーン。 Aren’t you forgetting something?
字幕:お前 甘いな
吹替:お前何か忘れてないか

Surely he should know that his fine future is a damn illusion.
字幕:明るい未来なんてただの幻想だ
吹替:どうして? 分かっといたほうがいいだろ 明るい未来なんてただの腐った幻想でしかない

戦時下で工場は重要施設ですから、国による庇護が手厚かったことでしょうが、戦後、連合国に占領されたドイツではデモンタージュと呼ばれる工場施設の解体や接収が行われ、それは1949年まで続きました。

ヘルムートのセリフは、国に帰ったところで工場で働けるわけがないことを示唆していて、セバスチャンはそれをわざわざ言うことないと止めてるんですね。 ヘルムートはなおも分かっておいた方がいいと現実を知らせようとして、彼の悲観性を覗かせ、世情を理解していないヴィルヘルムの幼さを強調したシーンでもあります。ヘルムートの言おうとしていることが飲み込めず、セバスチャンに一緒に働かないかと持ちかけるヴィルヘルムに、セバスチャンは無理だと分かっていながら話に合わせてあげます。

The three of us, hand in hand.
字幕:仲良しだな
吹替:仲良くやろうぜ

そこに俺も働かせてくれよとまぜっ返しに行くヘルムートのこの性格である。セバスチャンも含めて3人で働こうと抜け抜けと言ってのけるのが白々しい。

戦争の経験もないのに兄の遺品の軍服を着ていたら、捕虜と間違えられて異国に連れてこられて地雷処理させられているヘルムートの境遇を考えれば、悲観的にもなりますし、呑気なこと言ってる奴に突っかかりたくなる気持ちはわからないでもないですが。

セバスチャンが軍曹殿も忘れるなと言われた直後、なぜ食べなかったのか尋ねられて、字幕だと「僕だけもらえなくて」なんですが、「もらえなかったんです、軍曹殿」としっかり語尾に軍曹殿がついてるのが良かったです。

ヘルムートとセバスチャンのフラッグレース。 Morbach has beaten the world record!
字幕:世界記録を破ったぞ!
吹替:ヘルムート・モアバッハ、世界記録を破りました

ここも字幕版より正確なニュアンス残ってて嬉しいです。オリンピックの実況風なんですよね。戦争中はオリンピックも中止されていますから、ヘルムートが知っているオリンピックはナチスが国を挙げて取り組んだプロパガンダの最高傑作、1936年のベルリンオリンピックなんですよねぇ。少年たちがナチスの影響下に生まれ育ったことが伺える、演出として遠回しながら素晴らしく効果のある部分だと思うのでうれしい。

You might as well put us up against the wall and shoot us.
字幕:さっさと銃殺刑にしてくれ
吹替:だから言ったろ これなら銃殺された方がマシだ

英語字幕だと何で銃殺刑にしないんだと遠回しに軍曹を非難している感じですが、これは字幕吹替共にニュアンス違いますね。ここは銃殺刑にしてくれと投げやりな字幕の方が近い感じがします。

死の行進より逃げて銃殺刑になった方がマシだと逃亡を企てるシーン
Let’s run away, before we all die.
字幕:死ぬ前に逃げる
吹替:逃げ出そう 皆死ぬ前に

字幕版だと1人で逃げようとしてるみたいに見えかねないんですけど、Let'sにWeで、皆に呼びかけてるので吹替版の逃げ出そうの方が感じ出てます。

自分1人だけ逃げたいなら、皆に言わずに1人で逃げればいいんですからね。 まあ誰もついてこなくて癇癪起こすんですが。

翌朝、昨晩あんなに揉めたのに、他の少年達が立ち尽くす中、セバスチャンに続いて少女助けようと柵の中に入ってくとこが好きです。エルンストにも呼びかけてるんですよねぇ……。

そう言えば、ここのシーンの後で、ニット姿で眠れない風のセバスチャンのカットが入ってるんですが、その前に入ってるカットはシャツ姿でぐっすり寝ているセバスチャンで、農婦が来た時のセバスチャンもシャツ姿なので、カット編集のミスでしょうかね。セバスチャンが日に日に憔悴していっているのを伝えたかったのだと思いますが。

双子が虫と戯れるシーンの前も、顔写ってないもののヴィルヘルムらしき少年が積み木してて、撮影が前後してたんだなぁってところがありますが。

メイン以外のモブ気味の少年兵の声もガヤまでちゃんと入ってて良かったです。字幕だと誰が喋ってるのか分かりづらかったので。

吹替キャスト個人的な感想

ラスムスン軍曹:山賀教弘
軍曹の見た目からなんとなく渋めの声を予想していましたが、ラフな感じのおっちゃん声で、気短な感じと兵卒の叩き上げ感が出ててよかったです。終盤の少年たちに情が湧いてきてしまった感じがすごくよく出てました。

エベ大尉:赤坂柾之
字幕だと二人称が諸君、君とわりと丁寧で、内心のドイツ兵への不信と敵意にも関わらず、最低限の分別はつけているフリをしているような、神経質さと嫌味な印象があったのですが、吹替だと貴様、お前と高圧的で敵意が全面に出ているので、吹替で一番印象変わった人かもしれないです。いい声なので終盤のカールとのやりとりの存在感増してます。

セバスチャン・シューマン:寺島惇太
ザ・主人公ボイス。あまり若手声優さん詳しくないんですけど、櫻井孝宏さん系の耳に心地よい好青年風の中に芯の強さもある感じでとても役柄の雰囲気に合ってました。 ヘルムート・モアバッハ:小川ゲン
クセがない声なので字幕版より幼い印象でしま。 他の少年役はおおむね10代がキャスティングされているのですが、ヘルムート役のバズマンだけ20代後半なので、他の少年兵とは雰囲気が違うんですよね。演技もヒステリックで煽って来る感じなので。吹替だとその辺りが消えて少年らしさは増してるので、これでありかなと思いました。

ヴェルナー・レスナー:渡辺拓海
双子って何となく同一キャストがやる印象強かったんですけど(ハリー・ポッターのフレッドとジョージとか)、今作は別キャスト。
エルンストが後を追いたくなるのも分かる頼りになる兄ボイスでした。

字幕版とキャラクターの印象違うなぁというところも多かったですが、これはこれでという感じで全体的に良かったと思います。
セバスチャン、ルートヴィヒ、ヴェルナーあたりはテイストもバッチリでした。