そとでよ - 元ひきこもりの気ままな暮らし

元ひきこもりの気ままな生活。ひきこもりをしていましたが就職しました。

「角川文庫発刊に際して」が名文すぎる&「社会人大学人見知り学部卒業見込み」の感想

ということに、ほんの二、三ヶ月ほど前に気がついて、ものすごく感動しました。

同時に角川文庫を持っていて、巻末のこの名文を見逃している人が自分以外にもいたら、いてもたってもいられない!という謎の義憤に駆られ、とりあえず、身近な弟に朗読しうったえ「確かに名文だ」と同意を得て、ひとまずその場は満足したんですが、オードリーの若林の「社会人大学人見知り学部 卒業見込」(角川文庫)を読んでいたら、また思い出したので書きます。

第二次世界大戦の敗北は、軍事力の敗北であった以上に、私たちの若い文化力の敗退でもあった。私たちの文化が戦争に対して如何に無力であり、単なるあだ花に過ぎなかったかを、私たちは身を以て体験して痛感した(以下続)

「角川文庫発刊に際して」は1949年5月3日に角川創設者である角川源義氏によって書かれた文章で、角川文庫全作品の巻末に掲載されているはずです。

うちのトイレには大きめの棚があり、結構な冊数の本や漫画が、家族の趣味によって入れ替わり立ち替わり並んでいます。何故、本棚があるかというと父が便秘持ちで、トイレに本を持ち込む人だったので、その要望を汲んだ結果です。

その日もトイレで母が学生時代に買った日焼けした宮沢賢治の詩集をペラペラとめくってました。 気まぐれに巻末を開き、小さい字をまじまじと読んでみたら、素晴らしい名文でした。 上記の出だしの時点で私はすっかりノックアウトされているんですが、その後の角川文庫が背負った志の美しさも文に負けず劣らず。

これほどの志を持った人が戦後の日本の文芸を支えていたのだと思うと感動しかないので、角川文庫が身近にあって巻末読んだことない人は、ぜひともこの名文にふれていただきたいです。 以上、誰にも求められていないけど書きたかったこと。

社会人大学人見知り学部感想

完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫)

「夜を乗り越える」→「火花」→「社会人大学人見知り学部卒業見込」と芸人本を続けて読んでます。 若林はカワウソ似な愛嬌のある見た目に反して、意外に尖っているというはアメトーークあたりを見て薄々感じていた部分でしたが、いやぁもう面白い。序盤の尖りっぷりもそうですけど、終盤ちょっと丸くなってるのもまた序盤と比べてみると面白い部分ですし、同じネガティブ人間としては救われた気持ちになります。

面白い箇所はいろいろあるんですが、お笑い芸人を目指す人の特性について、精神科医に聞いたら「人間不信でしょうね」と即答された話が特に好きです。

笑うというのは人間の中でも嘘がつきにくい反応で、人のことが信じられない人でも、本能的に笑いだけは信じることができるから、笑いによる承認を求めて芸人を目指すのでは?という説で、確かになるほどなぁと思う部分がありました。

私はインパルスの板倉、サンドウィッチマンの富澤、スピードワゴンの小沢、タカトシのタカ、ブラマヨの吉田あたりが、個人的に特に好きだなぁと思う芸人さんなんですが、何となく近しい雰囲気を感じないでしょうか? 全員、相方にネガティブを一刀両断してくれそうなハキハキっとしたツッコミを選んでいるあたりにも因果律というか、何か法則的なものを感じます(そういう意味では相方がボケの春日な若林はイレギュラーなのかも……)

相方の春日について書いているエッセイもあるんですが、売れない時代に、努力をしない春日に対して、若林が「同級生はみんな結婚して子供もいるのに、風呂なしアパートで悔しくないのか!」と怒鳴りつけたのに、3日後に春日が「どうしても幸せなんですけど、やっぱり不幸じゃないと努力って出来ないんですかね?」と真剣に電話してくる話とか、この二人を端的に表してると思います。

本に載ってる話ではないんですが、オードリーが売れだした頃、周囲の人間の殆どが「売れてよかったね」と言葉をかける中、インパルスの板倉は初対面の若林に「どう?絶望してる?」と話しかけたエピソードがあり、板倉ファーストコンタクトから尖りすぎだろと思います。

この「絶望してる?」は、オードリーの数年前にブレイクし、エンタの神様のために来る日も来る日も新ネタ作りに追われた板倉が、精神的にかなり追い詰められていた時期をオードリーに重ね見た発言なんだそうです。 ひどい時には番組中や先輩との飲み会中にもネタを考えていて、結果、呼ばれなくなるという「先輩に可愛がってもらえない芸人」の布石になるような出来事も……相方の堤下は先輩に可愛がられてしょっちゅう飲みに行ってたのも堪えたんだろうなぁ。

若林も二週間ほどでネタが尽き、同じネタを何回もやったらら消費し尽くされてしまうんじゃないかと、危機感を感じていたらしいですが(p. 15)「何度でも同じネタをやっていい」と先輩に言ってもらって、風邪のネタしかやらなくなってからは、ネタ合わせの時間を番組の準備に当てることができるようになって楽になったという話は、いい先輩に恵まれたんだなぁと思いました。

若林は板倉の言う絶望に遠くない感覚が頭の中にあったようで、「絶望してる?」はすごく印象に残ったんだそうですが、一方、同じ言葉をかけられた春日は「何言ってんだこいつ」と思ったそうです(笑)どこまでも真逆(笑)

「火花」も読みました。

火花

特別な感動はなかったですが、ネットの誹謗中傷を指して神谷が「それがそいつの、その夜、生き延びるための唯一の方法なんやったら、やったらいいと思うねん」のところと、終盤の神谷の危うさと徳永との絆にくらくらしました。

不器用でどうしたって他の生き方ができない人たちは、なんでこうも美しいのかなぁと思います。若い時に読んでたら頭ガツーンと殴られてたのかもしれないなぁと思いました。